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LIN回路におけるネットワークトラブルの結末/ベンツS550
2026年07月31日

エアコンの制御不良にてお預かりした、W222モデル/ベンツS550の作業です。
エンジンを始動して正常に機能していると思いきや、突然デフロスターに勝手に切り替わって熱風が出続ける症状となります。

XENTRYにてKLA(エアコン制御モジュール)のDTC(故障コード)を確認すると、あらゆる(ほぼ全て)フラップアクチュエーターの機能障害が検知されています。
内気外気や温度調整も含む各エアコン送風口を制御するフラップアクチュエーター、ベンツの場合はCANのサブネットワークとなるLIN回路にて各アクチュエーターを各々制御しています。

フラップアクチュエーターの機能障害が検知されている場合、一般的には障害が発生しているアクチュエーターのLIN制御を測定診断していくことになります。
しかし今回の様に数十個に渡るアクチュエーターを其々点検していくには、インストルメント廻りをはじめ室内の大幅な分解作業を伴わないと全てにアクセスできず、点検プロセス段階としては現実的な作業とは言えません。

また今回の様に多岐に渡る各アクチュエーターが其々機能障害を発生しているとは考え難く、KLAユニット本体不良か?もしくは何れかのLIN回路でのショート等によるトラブルか?と推測できます。

その辺りの不具合診断を煮詰める為KLAユニットをはじめ点検を進行していくと、突然メーターの各警告ランプが点灯したり、エンジンを止めて車両をロックしてもヘッドライトが消えなくなったり…そして更に症状が悪化進行するとエンジンスタート制御まで出来なくなる不具合まで発生。

その症状が発生した際にXENTRYにてネットワーク診断を行なうと、トポロジーモニター上にてCAN-Bグループに属するKLAユニット及びフロントSAMユニット等が通信喪失に陥り、ネットワーク上に存在していない状態です。

CAN B回路を軸とした各CAN-BUSラインの測定診断を進行する流れとなるので、室内廻りを分解してネットワークラインを其々点検していくことに。

その為に室内フロア周辺の分解を進行すると、フロアカーペットの下に水が溜まっているのが判明。
外部からの雨漏れかエアコンの排水によるものか、フロアパネルが濡れてしまっています。

ベンツともなるとフロアパネル部位にも電装品が多く収納され、さらに今回のトラブルを吟味するとエアコンのリアセンターノズルエアフラップのアクチュエーターが怪しいのでは?と予測できます。

フロントシートを外してフロアカーペットを更に捲って確認すると、助手席側のリアセンターノズルエアフラップのアクチュエーター端子が水没により腐食しショートしてしまっているのが判明。


交換必要部品としては、助手席下にマウントされているエアフラップ&アクチュエーター内蔵のリアセンターノズルと、あとアクチュエーターに繋がる車両側の腐食したコネクターの修復作業となります。

先にも述べたようにベンツのエアフラップアクチュエーターはLIN制御による電子部品のひとつとなるので、交換した際はアクチュエーターの学習プロセス以前に、KLAネットワークに対する認識プロセスが必要となります。

たかがエアコンのフラップアクチュエーターひとつの不具合でエンジンまで始動しなくなる…LIN制御の為、今回のように水没トラブルによってLIN回路がショートしKLAのサブネットワークが崩れ、そしてKLAが属するCAN-Bネットワークまで影響を及ぼし各種警告点灯/始動不能状態にまで陥ってしまうという事例となります。
このようにECUネットワークトラブルに関しては予測できない様々な不具合を誘発してしまい、ベンツのSクラスにもなるとCANで制御されるECUが約80個程度存在、さらに各ECUにLIN制御によるサブネットワークまで考えると膨大な数のネットワーク回路となるので、より高度で的確な診断プロセスが求められることになります。
